MRO北陸放送
MROラジオ 毎月月末土曜日11時より「谷川恵一 そろそろ。」に出演しています
平成元年生まれの若きチーズ職人が里山で造る『養沢ヤギチーズ』
みなさま、こんにちは。
新緑の若葉が徐々に開いて輝いています。
小学校の6年間、卯辰山の竹林へ、タケノコ掘り遠足に出かけた思い出があります。
学年を越えて交流する活動「縦割り学級」といって、一年生は六年生と、二年生は四年生と、三年生は五年生と手をつないで歩き、タケノコを掘るのも手伝いあいました。
旬のタケノコを持って帰ると、祖母が分厚い皮をむいて、お米のとぎ汁を使って茹で、あく抜きをしました。
そうして下処理をしたタケノコは、筍ご飯や煮物にしてくれました。筍ご飯には、細かく切った筍と薄揚げ、彩りに人参が入っていました。
幼いころは薄揚げの食感が苦手でしたが、成長するとともに薄揚げの風味を楽しむようになりました。
祖母のつくる筍ご飯は、ふんわりした薄揚げに浸み込んだ出汁の味と、シャキシャキした筍の風味、優しい醤油味のご飯が絶妙でした。
旬といえば、チーズにも旬があることをご存じでしょうか。
初夏の風が心地よい今頃は、羊乳や山羊乳でつくるチーズが旬です!
フランス語で山羊乳チーズは「Chèvre(シェーヴル)」、羊乳チーズは「Brebis(ブルビ)」といい、健康と美容に良いといわれています。
山羊乳の脂肪球は牛乳の約1/6と小さく、消化吸収が良いのです。
含まれているタンパク質は牛乳よりもアレルギーを起こしにくいといわれます。
成分は母乳に近く、赤ちゃんや牛乳が苦手な方、消化器が弱い方におすすめです。
疲労回復、高血圧の予防、肝機能の強化などに効果があるタウリン。
視力や、免疫機能、皮膚や粘膜の健康に役立つビタミンA。
成長、免疫機能、味覚、DNA合成などに不可欠なミネラルの亜鉛。
腸内環境を整え、善玉菌を増やし、便秘の改善に役立つオリゴ糖。
といった栄養素が豊富に含まれています。
フランスには「山羊乳で始まり、山羊乳で終わる(Acheter le chevre et finir le chevre)」という言葉があり、山羊乳製品、特にシェーヴルが日々の食生活において重要な位置を占めることを表現しています。
ちなみに羊乳は山羊乳よりも脂肪分が多く、濃厚な味わいで、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素が豊富です。
さっぱり味の山羊乳チーズを楽しんだり、リッチな味わいの羊乳チーズを味わったりして、健やかに初夏を迎えましょう。
今日ご紹介するチーズは、国産のシェーヴルチーズです。
平成元年生まれの若きチーズ職人、堀 周(ほり いたる)さんが造っている「養沢ヤギチーズ」です。
「東京最後の秘境」と言われる、東京都あきる野市養沢地区にある養沢ヤギ牧場で製造されています。
堀さんは、新たに「畜産経営」を自ら始めた東京初の人として注目されています。
「生涯ずっと働き続けられる、生活に密着した仕事をしたい」という夢を持っていた堀さん。
東京理科大学を卒業後、会社勤めをしますが、その間も夢が揺らがないことを確信します。
3年後に会社を辞めて、チーズ工房と牧場で数年間修行。2020年に故郷のあきる野市養沢にヤギ牧場を開業しました。
母ヤギ12頭、仔ヤギ25頭を飼育しながら、一日二回ミルクを搾り、ほぼ一人で製造しています。
「養沢ヤギチーズ」は、2022年にはジャパンチーズアワード銅賞。
2024年6月には第一回アルティザンチーズアワードシェーブルソフト部門銀賞。
冷やした緑茶やアイスハーブティー、微発泡の日本酒や、軽やかな白ワインとの相性もおすすめです。
はちみつやドライフルーツと共に楽しむと、風味と彩りのアレンジが広がります。
月末に旬のチーズと季節のしつらいを学ぶレッスンをしています。
美味しく、美しく、チーズをアレンジし、食を通じて北陸・金沢の暮らしのしつらい、テーブルコーディネートを実践しています。
現在、奇数月の第4土曜日15:30~17:30のレッスンの受講生を募集しています。
詳しくはこちらの北國新聞文化センターWebサイトよりお問い合わせください。
https://hokkoku.bunkacenter.or.jp/kz_detail.php?ko_no=13223
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
進化する日本の『プロセスチーズ』春夏秋冬いつでも「旬」です
2025年3月22日(土)
みなさま こんにちは。
- 子供の純粋な心や、成長と責任感を語りかける「ピーターパン」
- 真実の愛、友情と助け合いの物語「白雪姫」
- 内面の美しさと愛の力を見つめなおす「美女と野獣」
- 忍耐強く努力し続ける大切さを教えてくれる「シンデレラ」
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
「きんかんなまなま」と山羊乳の『ブルードシェーヴル Bleu de Chèvre』
2025年2月22日(土)
みなさま こんにちは。
寒い日が続きますね。
学生時代、雪かきをして登校しました。
祖母が「今朝は、きんかんなまなまやさかいぃ、気ぃつけぇてぇ行きまっしぃ」と送り出してくれたことを思い出します。
金沢弁で、雪道が凍ってつるつるになり、滑りやすくなっている状態を意味する言葉です。
※金柑の皮は新鮮であればあるほど表面がつるつるしていることが由来
さて、このように寒い時期に、山羊は出産をはじめます。
なぜこんな寒い時に?と思いませんか?
山羊の多くは短日繁殖動物(たんじつはんしょくどうぶつ)といって、日が短くなる秋(9〜11月)に発情し、交配することが多いです。
山羊の妊娠期間は約5か月(150日程度)なので、春先(2〜4月)に出産することになります。
- 寒い春先に出産するのは、極寒の冬よりも春の方が暖かく、生存率が上がる。
- 春は草や新芽が生え始め、母山羊が栄養豊富な食事をとって母乳の質も向上する。
- 暖かい時期に比べて肉食動物の活動がやや低下するため、生まれたばかりの子山羊が襲われにくい。
といったメリットがあるそうです。
寒い時期に出産し、暖かくなるにつれて子山羊が成長することで、放牧に適したタイミングで丈夫に育ちます。
今日はその山羊乳で造るブルーチーズ「ブルー・ド・シェーブル」をご紹介します。
フランスのオーヴェルニュ地方で造られています。
オーヴェルニュ火山広域公園の境界、サンシー山麓の標高約950メートルの地に拠点を構えるラカイユ社。
1948年にラカイユ市のアントワーヌ・サルリエーヴ市長が旗振り役となり、第2次世界大戦の貧困から地域を立て直すために設立されました。1971年には協同組合となり、いくつもの伝統的なブルーチーズを生み出しています。
その近隣に位置する15軒の山羊乳生産者からの提案を受けて開発されました。
通常、ブルーチーズは牛乳製や羊乳製が多いのですが、地元のアルピーノ種の山羊乳を使用した珍しいブルーチーズです。
山羊乳は凝固しにくい特性があり、この性質を活かして、クリーミーなチーズに仕上げています。
美しい青カビが特徴で、適度な塩味ととろけるような食感が楽しめます。
金柑やイチジクなど甘みのあるフルーツと組み合わせると美味しさが引き立ちます。
ハチミツを入れた温かい紅茶や、甘みと酸味がある梅酒、スパイスの効いた甘めのホットワインとのペアリングもお勧めです。
ブルーチーズは水分が多く、生地が崩れやすいものが多いので、ワイヤーでカットすると断面がキレイに保てます。
パンに薄くカットしたチーズをはさんだり、塗ってスプレッドとしても楽しめます。甘めのドライフルーツとも相性が良いです。
さて、お知らせです。
3月11日(火)から2週間、石川国際交流サロンで、
「第8回 季にあひたる 和のしつらい洋のしつらい」テーブルコーディネート作品展を行います。
テーマは「物語」。
工芸を用いた食卓を通して、物語の魅力をお楽しみいただきます。
午前10時から午後18時まで、入場無料、月曜日は休館日です。
次回の放送でも、季節の移り変わりと、チーズの楽しみ方をこの番組でご紹介してまいります。
次回この時間にお耳にかかれますこと楽しみにしております。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
寒い季節には燻製チーズ『サンシモンダコスタ(San Simón da Costa)D.O.P.』
2025年1月25日(土)
みなさま こんにちは。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
毎月25日は、「学問の神さま」であり、「前田家の先祖」でもある、
菅原道真を祀る神社の縁日です。
特に1月25日は、その年初めての「天神の日」なので、「初天神祭り」です。
金沢市の天神町にある椿原天満宮や、兼六園内の金澤神社には、参拝者が訪れ、合格祈願や学業成就を祈る姿が見られます。
私が受験やコンクールに挑む際、両親は金澤神社で祈願してくれています。
感謝をこめて、お礼の参拝に行きます。
さて、一月から二月にかけては、新たなスタートとなる日が3つ続きます。
1月1日の正月、そして旧暦の正月(春節 2025年は1月29日)、それから立春(2025年は2月3日)の3つの新年です。
正月には、家族に挨拶をし、新しい決意を持ちます。
旧暦の新年には、暦への伝統を感じます。
立春には、前日の夜に「福は内、鬼は外」と豆まきで疫病神を追い払い、新たな季節の訪れを祝います。
生活に彩りを添え、豊かな四季を感じて成長できるよう、祖母は節目ごとに、床の間をしつらい、季節の料理を作ってくれました。祖父は、孫を集めて、おつとめ(お経を読む)や、旗源平などの郷土に根付いた遊び、節分の豆まき、卯辰山へ参拝などに連れて行ってくれました。
北陸の冬は寒いのですが、「春は雪の中から」。はじまりの季節に感謝しています。
寒い季節に食材を燻し、独特の風味と香りを楽しめる「燻製」がブームです。
今日はスペインのガリシア地方で作られる伝統的な燻製チーズ「サンシモンダコスタ(San Simón da Costa)D.O.P.」をご紹介します。
タケノコのようなユニークな形をしています。
丸ごと一個(ホール)で1㎏、赤ちゃんのお顔ぐらいの大きさです。
ガリシア地方のアベドゥールという樺の木を使って燻製するため、外皮は黄金色。
コーヒーやキャラメルのような香ばしさがあります。
新鮮なミルクを使って作られ、最低45日以上の熟成を経る製造ルールにのっとった、セミハードタイプのチーズ。ほんのり甘いミルクの風味を楽しめます。
チーズの名前 「サンシモンダコスタ」は、中世から聖なる場所とされてきたサン・シモンの丘(Monte de San Simón)に由来しています。「da Costa」は海岸の意味。
今日は「ジロール」という小型のハードチーズで丸い断面を削る専用の道具を使ってカットしました。
ナイフやスライサーよりも薄く、花びらのように美しく削ることができます。 薄く削ることでチーズの香りが一層広がり、口溶けも良くなります。
チョコレートのポッキーは、鬼の金棒をイメージしています。
サクランボのドライフルーツは、千両万両南天といった縁起の良い植物のイメージ。
ヒイラギと福豆も添えています。
聖なる新たな気持で、2025年を進んでまいりましょう。
お知らせです。
2025年2月11日(建国記念日)に、11時30分から13時30分、フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を開催します。
チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢にいらっしゃいます。本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインと、米田シャフによるチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、ご一緒にチーズフィンガーフードを学びましょう。
石川の工芸にチーズを盛り付ける試みもご紹介します。。
お申し込みは、チーズプロフェッショナル協会のWebサイトから。
夕刻には、本間るみ子先生を囲んでの懇親会があります。
また、3月11日(火)から2週間、石川国際交流サロンで、「第8回 季にあひたる 和のしつらい洋のしつらい」作品展を行います。
テーマは「物語」。工芸を用いた食卓を通して、物語の魅力をお楽しみいただきます。
午前10時から午後18時まで、入場無料、月曜日は休館日です。
次回の放送でも、季節の移り変わりと、チーズの楽しみ方をこの番組でご紹介してまいります。
次回この時間にお耳にかかれますこと楽しみにしております。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
夢を育み、エネルギーを得て、新しい年を迎えるチーズ『タカラのムスヒ』
2024年12月28日(土)
みなさま こんにちは。
今年も残りあと4日。
12月28日は「官公庁御用納め」ですが、 「ディスクジョッキーの日」、「シネマトグラフの日」でもあります。
「ディスクジョッキーの日」は、ラジオDJやパーソナリティの魅力を 広めるために制定されました。
日本のディスクジョッキーの草分け的存在「糸居五郎さんの命日」にあたる1984年12月28日にちなんでこの日に なりました。
糸井五郎さんの名セリフ「君が踊り、僕が歌うとき、新しい時代の夜が生まれる。太陽の代わりに音楽を。青空の代わりに夢を。フレッシュな夜をリードするオールナイトニッポン」。
小学校高学年になると、ラジオを聴きながら勉強をすることに憧れました。
今日、MROラジオ放送でお話をさせていただいていることに、感謝しています。
「シネマトグラフの日」は、1895年12月28日に映画の原型となった 初期の映画装置「シネマトグラフ」による映画が初公開されたこと に由来しています。
映画の始まりは1888年。トーマス・エジソンが、シカゴ万国博覧会で 発表した「キネトスコープ」で、のぞきめがね式の装置の中でフィルムを回転させ、「写真を使った動く映像」を1人で鑑賞するスタイルでした。
1895年(明治28年)、フランスのリュミエール兄弟は、エジソンの「キネトスコープ」を改良し、1台で撮影・映写・現像を行うことができる簡易な装置「シネマトグラフ」を開発しました。
そして12月28日、彼らが監督した『工場の出口』など10作品を公開。
リュミエール兄弟の「シネマトグラフ」は、現代まで続いています。
スクリーンに映像を映し、複数の人が同じ空間で共に楽しめる「映画」の原点となっています。
年末年始、音楽や映画などエンターテインメントを楽しまれる際、 その草分けや原点について思いを馳せてみてはいかがでしょう。
今日は「タカラのムスヒ」と命名された、北海道のソフトタイプチーズをご紹介します。
自然の乳酸菌をもとに仕込んだ酵母熟成チーズです。 生成り色で、とてもやわらかいです。
今年2月にこの番組でご紹介した「タカラのフュメ」をつくる 「チーズ工房タカラ(北海道喜茂別町)」の斉藤愛三(なるみつ)さんがつくっています。
お兄さん夫妻が、ストレスのない牧場で牛を育て「幸せの牛のミルク」を搾ります。
それを原料に、愛三さんが大自然に寄り添いながら「大地と共に生きる理念と想いを込めて」チーズをつくっています。
「タカラのムスヒ」の『タカラ」とはアイヌ語で「夢を育む」。
『ムスヒ』とは、古事記に出てくる言葉で、 「産み出だす・霊力(れいりょく)(神秘的な力)」=万物生成のエネルギー、という意味があります。
「ムス」は生じる。「ひ」は霊威(れいい)(不思議な威力)の意味。 天地、万物を生み、また成長する霊妙(れいみょう)(神秘的)な力が、チーズ名の由来です。
若いうちはカットして召し上がっていただけます。
熟成させるとトロリとしてくるので、木箱からスプーンですくって楽しめます。
チーズから夢を育み、エネルギーを得て、新しい年を迎えましょう。
毎月末「旬のチーズと季節のしつらい」を学ぶレッスンを行っています。
美味しく、美しく、チーズをカットし、すてきな一皿にアレンジします。
おもてなしにも役に立つ、食材のカットやアレンジ方法が身に付きます。
食を通じて、北陸・金沢の暮らしのしつらい、テーブルコーディネートを実践していますので、日々の食卓に、季節の彩りを添えたひとときを感じる機会になります。
オンラインでもレッスンをしています。
テーマに合わせたチーズをあらかじめお送りさていただき、モニター越しに、チーズの説明、適したチーズカットの方法、盛り付け方やアレンジメントを、ご覧いただきます。
ご一緒にカットされてもよろしいですし、後日、ご自身でつくられた作品を撮影して送っていただければ、アドバイスさせていただきます。
チーズのかしこい買い方、扱い方、保存方法についてもお伝えしています。
年末年始、ご家族やご親戚の皆さま、お友達と集う機会が多いと思います。 お家でおもてなしする際の、お役に立てるでしょう。
(チーズは同じでも、プラトーは十人十色。ご自身のイマジネーションを活かして盛り付けます。クリスマスと正月おせち料理のイメージで創りました)
(MROラジオ放送のスタジオに届けた「タカラのムスヒ」チーズアレンジ)
【お知らせ】
来年、2025年2月11日(建国記念日)に、11時30分から13時30分、フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる 「チーズフィンガーフード教室」を開催します。
チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢に いらっしゃいます。
本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインと、米田シャフによるチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、一緒に学びましょう。
お申し込みは、チーズプロフェッショナル協会のWebサイトから。
夕刻の懇親会も企画しています。
また、3月11日(火)から2週間、石川国際交流サロンで、 「第8回 季にあひたる 和のしつらい洋のしつらい」作品展を行います。
テーマは「物語」。
工芸を用いた食卓を通して、物語の魅力をお楽しみいただきます。
午前10時から午後18時まで、入場無料、月曜日は休館日です。
次回も、季節の移り変わりと、チーズの楽しみ方をこの番組で ご紹介してまいります。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
スパイシーな『アルディ ガスナARDI GASNA』であたたまりましょう
2024年11月23日(土)
みなさま、こんにちは。
「いしかわ四高記念公園」と「しいのき緑地」の間の並木道。アメリカ楓が色鮮やかに紅葉し、落ち葉で道路も色づいています。
知人の酒蔵では、今年第一号のお酒が搾りあがり、青々とした杉玉に付け替えたとの便りがありました。
杉玉は、杉の葉を集めて丸くボール状に作ったものです。酒蔵の軒先に吊るされ、新酒の完成や日本酒の熟成具合を知らせる役割があります。酒林(さりん)とも呼ばれます。
石川県内の酒蔵でも、新酒の仕込みが本格化しているとのニュース。
今月初めには、
「国連教育科学文機関(ユネスコ)の評価機関が日本酒や焼酎などの『伝統的酒造り』を無形文化遺産に登録するよう勧告した」
と、文化庁が発表しました。
日本の伝統的な酒造りの技術は、その恵まれた気候風土の中で育まれた「こうじ菌」を使う独特のものであり、日本が誇る文化として令和3年12月に国の無形文化財に登録されています。
来月、12月2〜7日にパラグアイの首都、アスンシオンで開かれるユネスコ政府間委員会で正式に決まる見通しです。
ユネスコ無形文化遺産に登録されれば、国内23件目。「和食」に続いて酒造りが、ユネスコ無形文化遺産の仲間入りをするのが待たれます。
日本酒は和食・洋食・中華などの料理とも組み合わせることができる最強のお酒だと思います。
提供を温度の違いや、器の素材や飲み口の形状の違いなど。一つのお酒を、幅広く楽しみ方を変えることができます。
冷蔵設備のない昔は、酒造りは「寒造り」といって、11月から3月頃までの寒い時期に限って行われていました。
杉玉が新調され、酒造りが活発になるこの時期。冬場は酒造りに適した条件が揃い、醸し出される酒の品質も最良であると言われていました。
海外でも人気が急増の日本酒。
私たちの「国酒」は、大きく羽ばたいていると思います。
さて、朝晩の冷え込みが増し、日中の天気は晴れたり時雨たり。
北陸の冬らしくなってきました。身体があたたまるチーズをご紹介します。
フランスのバスク地方で生産される、羊乳製セミハードタイプのチーズ「アルディ ガスナ ピマン デスプレット ARDI GASNA PIMENT D’ESPELETTE」です。
ピレネー地方で農家の人々は、羊乳製チーズのことを親しみを込めて「アルディ(羊)ガスナ(チーズ)」と呼んでいます。
AOP(原産地呼称保護)「オッソー イラティ」でも有名な産地です。
昔ながらの素朴なチーズには、コク深い羊乳チーズに、エスプレット村の名産品にもなっているAOP(原産地呼称保護)認定の唐辛子「ピマン デスプレット」が入っています。
この唐辛子の持つ上品な辛さの中に、甘さを兼ね備えたスパイシーな風味が、味わい豊かな羊乳製チーズにアクセントを加え、その独特な深みが人気となっています。
このスパイシーな味わいは、身体を芯から温めます。
チーズとチョコレートは相性が良いので、今日はチョコレートを添えました。
ティータイムにチーズとチョコで、心も身体もあったまってください。
季節のテーマにそって、チーズを様々な形にカット・アレンジをして、器に盛り付け、テーブルコーディネートと共に味わいながら楽しむレッスンを行っています。
12月20日には大きなモンドールを楽しむクリスマス会がございます。
また、来年、2025年2月11日(建国記念の日)に、11時30分から13時30フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を開催予定です。
チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢にいらっしゃいます。本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインと、米田シャフによるチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、一緒に学びましょう。
ぜひ、スケジュール帳にメモしていただけると幸いです。
お申し込みは、後日チーズプロフェッショナル協会のWebサイトに掲載予定です。
次回も金沢の四季の移ろいと、旬のチーズの楽しみ方を、ご紹介いたします。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
いにしえより日本で愛されてきた茶色。秋色の『ブラウンチーズ』
2024年10月26日(土)
みなさま、こんにちは。
秋晴れの美しい週末です。
気象庁の予報では、11月に入っても気温は高い傾向です。
冬の訪れはまだ先になりそうですね。
兼六園の紅葉は、例年11月中頃です。
濃い緑のなかの奥深い紅葉が美しい季節を迎えます。
さて、なぜ秋になると「紅葉」するのか、ご存じでしょうか。
気温が高い春から夏にかけて、樹々は日光をたくさん浴びます。
緑色の葉っぱは、自らの葉緑体から栄養分を作り出します。
これが理科で学んだ「光合成」です。
秋を迎え、気温が徐々に下がりはじめます。
すると、光を受けてエネルギーに変換する働きと、そのエネルギーを使って養分をつくる働きの連係プレーのバランスが崩れてきます。
樹々は葉っぱを維持するためのエネルギー量と、採算が合わなくなるため、葉っぱを落とすための準備を始めます。
この、葉っぱが役割を終える過程で、葉の色に変化が起こります。
樹木の種類によって、黄色く染まるものと赤く染まるものがありますが、いずれにしても「緑→黄」「緑→赤」と変化します。これが紅葉です。
きれいな落ち葉を拾って、本の間にはさみ、祖母と見せ合いっこをして遊びました。
今でも本棚から「押し葉」をした懐かしい本を見つけて開くと、タイムスリップをした気持ちになります。
「秋の色」のイメージは、黄色や赤色、そして茶色でしょうか。
茶色は大地や木の幹、動物の毛皮など古代から自然にある身近な色で、安心して身を預けることのできる支えの色といわれます。
そして落ち葉や朽ちた木々、泥など厳しい自然の力も表しています。
日本では茶色は古くから愛されてきました。
平安時代から続く、天皇が儀式で着用する赤茶色の装束「黄櫨染(こうろぜん)」。
櫨(はぜ)の木の黄色と蘇芳(すおう)の赤色、酢、灰汁(あく)などで染められ、太陽の光に当たると色が変化し、金茶色から茜色に変わり、着物の内側は太陽のように真っ赤に変化する、神々しい色です。
古くは禁色(きんじき)(日本の朝廷において、一定の地位や官位等を持つ者以外に禁じられた服装の色)とされていました。
また「朽葉色(くいばいろ)」は、はかない命や自然の摂理に美しさを感じる平安時代の貴族に愛されました。
江戸時代には、政府が派手な色を禁止したため、粋の文化として「江戸(えど)茶」「鶯(うぐいす)茶」「海老(えび)茶」など多くの茶色が庶民に広がりました。
自然を大切にする日本人にとって、茶色は美しさを感じる色だったのです。
今日は、茶色の季節にぴったりの「ブラウンチーズ(別名:ブルノスト)」をご紹介します。
ノルウェー発祥のホエイ(乳清)を煮詰めて作った乳製品で、ノルウェーの国民食とも言われるほど生活に根付いた食品です。
茶色の滑らかな組織が特徴的です。
チーズというよりはキャラメルのように見えます。
味もキャラメルのようです。
ほのかな甘みと塩味、そして少々の苦みとコクがあります。
おやつや、おつまみにも気軽にいただけます。
原産国ノルウェーでは、パンやワッフルにトッピングしジャムをのせて朝食や軽食として楽しみます。コーヒーとの相性も良いのです。
ミルクに溶かしても美味しいです。
〈ノルウェーのブラウンチーズ「ブルノスト」の楽しみ方〉
作り方はシンプル。大きな釜でホエイ(乳清)・生乳とクリームが合わせられ、糖分がカラメル状になるまで長時間煮詰めます。
乳糖を多く含むチーズを長時間加熱するとメイラード(Maillard)反応が起こり、褐色化します。褐色は主に薄茶色ですが、勝色(かちいろ)勝 (かち)に通ずるとも考えられています。
そうして、煮詰めたものを型詰めして冷やせば、ブラウンチーズが完成します。
時間はかかりますが、ご自宅でも材料とお鍋があれば簡単にブラウンチーズが造れます。
〈雑誌で紹介したブラウンチーズ〉
(日本では乳から作られたものがチーズという定義になっている(日本の「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」の定め)ため、ブラウンチーズは実際にはチーズに分類されず ”乳等を主要原料とする食品” となります)
今日のブラウンチーズは、友人のチーズ工房で造られたものです。
ナチュラルチーズを造ると大量のホエイが副産物として得られるのですが、"大量"がどのくらいかと言うと、生乳を100%としたときにチーズになるのはわずか10%、残りの90%はホエイです。想像しているより大量ですよね?
ホエイには多くの乳酸菌は勿論、ビタミンやミネラルなどの栄養分が残っています。ホエイは捨てるには勿体無く、再生可能な力があると考え、注目を浴びるようになっています。
友人も、大量のホエイを廃棄することなく活用することを目的にブラウンチーズを造っています。
思いやりの心が込められた、ブラウンチーズです。
〈ナカシマファームのブラウンチーズ〉
〈友人のチーズ工房で造られたブラウンチーズ〉
〈MROラジオ放送にお持ちしたブラウンチーズ〉
〈ハロウィンのチーズプレゼンテーション〉
季節のテーマにそって、チーズを様々な形にカット・アレンジをして、器に盛り付け、テーブルコーディネートと共に味わいながら楽しむレッスンを行っています。
〈秋のテーブル〉
11月8日9日10日、「国内最大級の伝統工芸の祭典「KOUGEI EXPO IN ISHIKAWA」が、「石川県政記念しいのき迎賓館」で開催されます。メインテーマは「工芸の底力(そこぢから)・復興の翼 ~石川から未来につなぐ、日本の美技(びぎ)~」です。私は工芸を用いたテーブルコーディネートを展示します。ワークショップや展示販売もございます。ぜひお出かけください。
また、来年、2025年2月11日(建国記念の日)に、フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を開催予定です。
チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢にいらっしゃいます。本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインとチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、一緒に学びましょう。
ぜひ、スケジュール帳にメモしていただけると幸いです。
お申し込みは、後日チーズプロフェッショナル協会のWebサイトに掲載予定です。
次回も金沢の四季の移ろいと、旬のチーズの楽しみ方を、この番組でご紹介してまいります。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
芋・栗・南瓜、ホクホクした秋の味覚と共に『コンテ Comté』
2024年9月28日(土)
みなさま、こんにちは。
もうすぐ10月ですね。
高くなっていく空や、爽やかに吹き抜ける風に、ようやく秋の気配を感じています。
さて、秋といえば…「実りの秋」!
秋は食べ物がおいしい季節です。
みなさんのお気に入りの「秋の味覚」は何でしょうか。
あるアンケート調査によると、1位がさつまいも。2位が栗。3位さんま。4位梨。5位かぼちゃ。6位新米。7位ぶどう。8位柿。9位鮭。10位きのこ。でした。
小学生のころ、芋掘り遠足に行った思い出があります。
縦割り班活動と言って、6年生が1年生の手をつなぎ、5年生は3年生、
4年生は2年生と手をつないで、さつま芋畑へ収穫に向かいました。
はじめて芋堀りをした1年生の時。
帰り道は6年生のお姉さんに手をひいてもらい、ウトウト居眠りしながら歩いていました。
「この子眠りながら歩いているよ」と、だれかが声をあげました。
驚いて目が覚め、恥ずかしかったことを覚えています。
袋いっぱいに収穫したさつま芋。
誇らしげに持ち帰ると、祖母がふかし芋や煮物にしてくれました。
栗拾いにも行きました。
持ち帰ると、祖母があっという間に、栗ご飯にしてくれました。
大人になり、いざ栗ご飯を作ってみようとすると、渋皮を剥くのが大変なことがわかりました。
かといって瓶詰めや剥き栗を買ってきても、すぐ形が砕けてしまいます。
栗は鮮度が命!剥きたて・ゆでたての味は格別だということが身にしみました。
かぼちゃも同様。祖母はあっという間にかぼちゃの皮を剥いて、煮てくれました。
祖母は魔法使いのようでした。
祖母のつくってくれたホクホクしたさつま芋や、栗ご飯、味のしみたかぼちゃの煮物。その味が恋しいです。
さて、今日はナッツのような香りと栗のようなほくほくした美味しさで知られている、牛乳製のハードタイプチーズ「コンテ(Comte)」をご紹介します。
フランス3大「山のチーズ※1」の一つです。
フランス東部スイスに隣接するフランシュ・コンテ地方、厳しい冬を乗り越えるために長期保存を目的として作られる、重さ32~45kg(小学生の体重くらい)もある大型のチーズです。
自然豊かなこの地方の牧草を食べた乳牛から摂れるミルクはとてもまろやかで、それがチーズの風味に生かされ、素晴らしいアロマとなります。直径60cm程の巨大チーズ1個あたりに、なんと500Lものミルクを使用。まろやかなミルクがギュッと凝縮されているからこそ出せる芳醇な味わいが、高い支持を得ている理由のひとつ。
フランスではAOC(原産地呼称統制法)認定チーズの中で最も生産量が多く、広く親しまれているチーズです。
硬質で重量感があり、水分が少ないので旨味が詰まっています。
カットや食べ合わせによって、多様な味わいが楽しめます。
- おやつやおつまみとしてそのまま。
- スライスしてパンにのせて。
- サンドイッチの具材に。
- グラタン、スープ、フォンデュなど料理の材料として。みそ汁に入れても。
- ワインや日本酒のお供に。抹茶のお茶請けに。
- 黒コショウやパプリカなどのスパイスと共に。
- 味噌漬け、天ぷら、おにぎりの具材として。
- 羊羹や小豆餡、八つ橋などの和菓子と合わせて。どら焼きに挟み込むのも美味しい。
- 抹茶アイスに細かく刻んだコンテチーズをトッピング。
1958年にはAOP(原産地呼称保護)を取得しています。
※1:フランスのサヴァオ地方で作られるアボンダンスAbondance・ボーフォールBeaufort・コンテComteの3種類のハードチーズのこと。三大山のチーズA・B・Cと覚える。
季節のテーマにそって、チーズを様々な形にカット・アレンジをして、器に盛り付け、テーブルコーディネートと共に味わいながら楽しむレッスンを行っています。
また、2月11日(火・祝)に、フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を開催予定です。
チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢にいらっしゃいます。本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインとチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、一緒に学びましょう。
ぜひ、スケジュール帳にメモしていただけると幸いです。
お申し込みは、後日チーズプロフェッショナル協会のWebサイトに掲載予定です。
次回も金沢の四季の移ろいと、旬のチーズの楽しみ方を、
この番組でご紹介してまいります。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】
山をあふがぬ日もなきは♪ シェーブルチーズ『富士山(ふじやま)』
2024年8月24日(土)
みなさま、こんにちは。
暦の上では暑さが落ち着く頃とされますが、35度を超える猛烈な暑さが続いていますね。秋の訪れはまだ先のようです。
8月後半になると、子供の頃は毎年、夏休みの宿題にかかりっきりでした。
ギリギリになってから、宿題をやりはじめた方も多いのではないでしょうか。
早く大人になって、宿題から解放されたいと願っていました。
ところが、大人になると、長い夏休みはなくなり、宿題は「仕事」に変わりました。
祝日や休日があると、「仕事」を抱えていても、なんだかほっとします。
国民の祝日として7月には「海の日」、8月には「山の日」があります。
海の日は、「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」という趣旨で、1996年に祝日として制定されました。世界中で『海の日』を国民の祝日としている国は日本だけだそうです。
山の日は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨として2014年に祝日として制定されました。
金沢は、海と山に囲まれた、自然豊かな土地です。
室生犀星が作詞した学校歌に「やまべうみべに われらそだたん」とあります。
また、「山を仰がぬ日もなきは」という校歌があります。
金沢市と富山県福光町にまたがる犀川源流の山、「大門山(だいもんざん)」。
金沢の市街地から眺めると富士山に似ているので「加賀富士」と呼ばれています。
室生犀星や五木寛之の作品の中に登場し、「日本三百名山」に選定されています。
夏の晴れ間、金沢から加賀富士を仰いでみては、いかがでしょうか。
今日は富士山の形をした、日本のチーズを紹介します。
広島県三次市にある、チーズ工房「三良坂フロマージュ」の松原さんが造る、山羊乳から造られる『富士山(ふじやま)』です。
松原さんは、山で家畜を自然放牧する「山地酪農」(やまちらくのう)スタイルで、牛と山羊を育て、放牧ミルクでチーズを造っています。
春は新芽や筍、夏は青々とした牧草、秋は栗などの木の実、冬は笹など、山の恵みで育った、山羊と牛のミルクは、私たちの体にとても優しいチーズになります。
今日ご紹介するチーズは、富士山の形をした山羊のチーズに、食用の炭をまぶして熟成させています。きめ細かい食感で、さわやかな酸味と、濃厚で旨みがあり、心地よい余韻を楽しめるチーズです。
山羊乳で造られるチーズを「シェーブル」といいます。フランス語で「シェーブル」は山羊の意味です。山羊の出産サイクルでは、シェーブルは春~秋が旬です。
旬のシェーブルを楽しみながら、暑い夏を乗り切りましょう。
季節のテーマにそって、チーズを様々な形にカット・アレンジをして、器に盛り付け、テーブルコーディネートと共に味わいながら楽しむレッスンを行っています。
次回も金沢の四季の移ろいと、旬のチーズの楽しみ方を、
この番組でご紹介してまいります。
【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】