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いにしえより日本で愛されてきた茶色。秋色の『ブラウンチーズ』

みなさま、こんにちは。

 

秋晴れの美しい週末です。

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気象庁の予報では、11月に入っても気温は高い傾向です。

冬の訪れはまだ先になりそうですね。

 

兼六園の紅葉は、例年11月中頃です。

濃い緑のなかの奥深い紅葉が美しい季節を迎えます。

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さて、なぜ秋になると「紅葉」するのか、ご存じでしょうか。

気温が高い春から夏にかけて、樹々は日光をたくさん浴びます。

緑色の葉っぱは、自らの葉緑体から栄養分を作り出します。

これが理科で学んだ「光合成」です。

秋を迎え、気温が徐々に下がりはじめます。

すると、光を受けてエネルギーに変換する働きと、そのエネルギーを使って養分をつくる働きの連係プレーのバランスが崩れてきます。

樹々は葉っぱを維持するためのエネルギー量と、採算が合わなくなるため、葉っぱを落とすための準備を始めます。

この、葉っぱが役割を終える過程で、葉の色に変化が起こります。

樹木の種類によって、黄色く染まるものと赤く染まるものがありますが、いずれにしても「緑→黄」「緑→赤」と変化します。これが紅葉です。

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きれいな落ち葉を拾って、本の間にはさみ、祖母と見せ合いっこをして遊びました。

今でも本棚から「押し葉」をした懐かしい本を見つけて開くと、タイムスリップをした気持ちになります。

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「秋の色」のイメージは、黄色や赤色、そして茶色でしょうか。

茶色は大地や木の幹、動物の毛皮など古代から自然にある身近な色で、安心して身を預けることのできる支えの色といわれます。

そして落ち葉や朽ちた木々、泥など厳しい自然の力も表しています。

日本では茶色は古くから愛されてきました。

平安時代から続く、天皇が儀式で着用する赤茶色の装束「黄櫨染(こうろぜん)」。

櫨(はぜ)の木の黄色と蘇芳(すおう)の赤色、酢、灰汁(あく)などで染められ、太陽の光に当たると色が変化し、金茶色から茜色に変わり、着物の内側は太陽のように真っ赤に変化する、神々しい色です。

古くは禁色(きんじき)(日本の朝廷において、一定の地位や官位等を持つ者以外に禁じられた服装の色)とされていました。

また「朽葉色(くいばいろ)」は、はかない命や自然の摂理に美しさを感じる平安時代の貴族に愛されました。

江戸時代には、政府が派手な色を禁止したため、粋の文化として「江戸(えど)茶」「鶯(うぐいす)茶」「海老(えび)茶」など多くの茶色が庶民に広がりました。

自然を大切にする日本人にとって、茶色は美しさを感じる色だったのです。

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今日は、茶色の季節にぴったりの「ブラウンチーズ(別名:ブルノスト)」をご紹介します。

 

ノルウェー発祥のホエイ(乳清)を煮詰めて作った乳製品で、ノルウェーの国民食とも言われるほど生活に根付いた食品です。

茶色の滑らかな組織が特徴的です。

チーズというよりはキャラメルのように見えます。

味もキャラメルのようです。

ほのかな甘みと塩味、そして少々の苦みとコクがあります。

おやつや、おつまみにも気軽にいただけます。

原産国ノルウェーでは、パンやワッフルにトッピングしジャムをのせて朝食や軽食として楽しみます。コーヒーとの相性も良いのです。

ミルクに溶かしても美味しいです。

 

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〈ノルウェーのブラウンチーズ「ブルノスト」の楽しみ方〉

 

 

作り方はシンプル。大きな釜でホエイ(乳清)・生乳とクリームが合わせられ、糖分がカラメル状になるまで長時間煮詰めます。

乳糖を多く含むチーズを長時間加熱するとメイラード(Maillard)反応が起こり、褐色化します。褐色は主に薄茶色ですが、勝色(かちいろ)勝 (かち)に通ずるとも考えられています。

そうして、煮詰めたものを型詰めして冷やせば、ブラウンチーズが完成します。

時間はかかりますが、ご自宅でも材料とお鍋があれば簡単にブラウンチーズが造れます。

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〈雑誌で紹介したブラウンチーズ〉

 

 

(日本では乳から作られたものがチーズという定義になっている(日本の「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」の定め)ため、ブラウンチーズは実際にはチーズに分類されず ”乳等を主要原料とする食品” となります)

 

今日のブラウンチーズは、友人のチーズ工房で造られたものです。

ナチュラルチーズを造ると大量のホエイが副産物として得られるのですが、"大量"がどのくらいかと言うと、生乳を100%としたときにチーズになるのはわずか10%、残りの90%はホエイです。想像しているより大量ですよね?

ホエイには多くの乳酸菌は勿論、ビタミンやミネラルなどの栄養分が残っています。ホエイは捨てるには勿体無く、再生可能な力があると考え、注目を浴びるようになっています。

友人も、大量のホエイを廃棄することなく活用することを目的にブラウンチーズを造っています。

思いやりの心が込められた、ブラウンチーズです。

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〈ナカシマファームのブラウンチーズ〉

 

 

 

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〈友人のチーズ工房で造られたブラウンチーズ〉

 

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〈MROラジオ放送にお持ちしたブラウンチーズ〉

 

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〈ハロウィンのチーズプレゼンテーション〉

 

 

季節のテーマにそって、チーズを様々な形にカット・アレンジをして、器に盛り付け、テーブルコーディネートと共に味わいながら楽しむレッスンを行っています。

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〈秋のテーブル〉

 

11月8日9日10日、「国内最大級の伝統工芸の祭典「KOUGEI EXPO IN ISHIKAWA」が、「石川県政記念しいのき迎賓館」で開催されます。メインテーマは「工芸の底力(そこぢから)・復興の翼 ~石川から未来につなぐ、日本の美技(びぎ)~」です。私は工芸を用いたテーブルコーディネートを展示します。ワークショップや展示販売もございます。ぜひお出かけください。

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また、来年、2025年2月11日(建国記念の日)に、フランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を開催予定です。

チーズ業界のパイオニア、本間るみ子先生がゲストとして金沢にいらっしゃいます。本間先生を迎え、「ぶどうの森 タパス エ バール」の美味しいワインとチーズを用いたフィンガーフードを楽しみながら、一緒に学びましょう。

ぜひ、スケジュール帳にメモしていただけると幸いです。

お申し込みは、後日チーズプロフェッショナル協会のWebサイトに掲載予定です。

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次回も金沢の四季の移ろいと、旬のチーズの楽しみ方を、この番組でご紹介してまいります。

 

 

【アーカイブ(MRO北陸放送ラジオ「(谷川恵一 そろそろ。(旧モリラジ!)」出演)】

 

 

 
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