第6回 玉利かおるさん
BS朝日の『ワインの誘惑』というワイン番組をはじめ、ラジオやドラマに出演。キャスター、シンガーソングライター、コラムニスト、ワイン講師など、様々な分野で「伝える」活躍をされている玉利かおるさん。社団法人日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの資格を持つ玉利さんに、「ワインとの出会い」、「ワインとの思い出」、「ワインと仕事」、「ワインとの接し方」などについてお話をうかがいました。
初めてのワイン
玉利さんが大学生の頃、初めておいしいなと感じて印象に残っているワインは、ドイツの“マドンナ”(リープフラウミルヒ)だそうです。
学生たちが焼酎やビールなどを飲んでいる中で、ワインはおしゃれな飲み物でした。
実は、玉利さんがワインに出会ったのは、幼い頃です。
玉利さんのお父様は、山梨県の“マルスワイナリー”でワイン醸造のお仕事をしていましたので、玉利さんが幼いながらに美味しかったと記憶しているのは、“マルスポートワイン”という甘味果実酒でした。小学校1?2年生の時に九州へ移るまでは、樽の匂いとぶどうの香りのする環境で育ったそうです。
日本のぶどう畑の棚は、大人が腰を屈めて歩かなくてはいけないくらいの高さですが、玉利さんのイメージ記憶では、子どものとき遊んでいたぶどう畑の棚は、当時の背丈からすると、とても高かったそうです。
今でも、ワインのテースティングをしていると、ぶどう畑で育った頃の懐かしい香りを感じ、気持ちがほっとするのだとか。
大人になって色々なワインを飲むようになりましたが、なにが美味しいのか全然わからないと思ったことから、本格的にワインを勉強することになったとのこと。資格認定試験を受けるべく、学校へ通い、ワインエキスパートの資格試験にみごと合格しました。その後、文化センターでワイン講師をしたり、シンガーソングライターとしてのデビュー作品となった「バングルバングルの風」という CDを2000年に発売した時には、ワインとコンサートのディナーショーを開催したりと、ワインに関わる活躍を始めるようになりました。
学生の頃より DJ、レポーターのアルバイトをし、沖縄のキャンペンガールとしてモデル事務所に入った玉利さん。もっと話し、伝える仕事がしたい、アンカーウーマンになりたいと思い、上京しました。
取得したワインの資格を生かし、ワインについてのコラムを紙面に連載したり、ワインの番組を受けもつようになります。 BS朝日の『ワインの魅惑』は、毎回多彩なゲストを招き、その人にまつわるワインを取り上げ、チーズなどと組み合わせながらゲストに語ってもらうという番組です。例えば、長野県知事田中康夫さんがゲストの時は、シャンパーニュの“クリスタル”。田中氏の著書『なんとなく、クリスタル』にちなんでのことで、また、長野に新風を起こした“ドメーヌ・ソガ”のメルローと、ボルドーに新風を起こしたといわれる“マロジャリア”のワインを比較試飲しながら、ゲストの人生について語ってもらうということもありました。一回に放送二本分の収録を通じて、ワインの名前は知っているけれど、実際に飲んだことがなかったワインを色々飲むことができたそうです。
思い出のワイン
昨年、お嬢さんが誕生し、それまでしばらくワインを飲めなかった玉利さん。一年半越しでメンバーを集い、先日、広尾のなじみのレストランで「ロマネ・コンティを飲む会」を開催したそうです。玉利さんにとって、また参加者にとっても初めてのロマネ・コンティを飲む機会でした。
始めの30分はロマネ・コンティだけで楽しみ、後は違うワインで楽しむという段取りでした。
「ロマネ・コンティとはどんなすばらしいワインなのだろう」と期待していたそうですが、想像以上の時を過ごされたそうです。
最初の40分はロマネ・コンティの撮影会。参加者のみんなは、もし、この1988年のロマネ・コンティの中身がダメになっていても関係ないくらい、ワインを眺めるだけで十分楽しんだそうです。いよいよワインを開けて、一口飲んだ時、涙が出てきてしまった、という玉利さん。もう思い残すことがないくらい、理屈抜きにすばらしいワインだったのだとか。一度でいいから飲んでみたいと思っていたロマネ・コンティ。会場の雰囲気を作ってしまう1988年のロマネ・コンティは、まだ少し若い感じもありましたが、とてもきれいなワインだったそうです。
ワインとの接し方
ワインは場の雰囲気を変えてくれる、という玉利さん。「ワインを囲むと、そこに絶世の美女がいるような気がするのです。すてきな人と一緒にいる瞬間だから、このひと時を大切にしようと思います」。
ワイン会も主催する玉利さん。ワイン会の日は、朝から緊張して挑むのだとか。「まず洋服選びから始めます。どんな洋服にしようか、それが楽しみで、『こういうワインをこういう人たちとこういう場所でいただくのだから』と考えるのがとても楽しくて、その時を大事にしています。洋服の次は、どんな靴をはいていこう、どんなおしゃれをしようかしらと悩みます。靴なんてテーブルの下にかくれてしまうけれど、せっかくワインを飲むのだから、ワインに敬意を払って、頭の上から足のつま先まで、とにかくきれいでいたいと思います。おいしいワインと過ごす時間は、素敵な男性または女性と過ごす時間のようなものなのです。ワインと食事を楽しむときは、おしゃれをしたいですね」
という玉利さんのファッションセンスは抜群で、真っ白な上下のスーツがとてもお似合いです。玉利さんのファッションは、ワイン会同席者のもう一つの楽しみになるのではないでしょうか。
「アメリカのワイン雑誌『ワイン・アンド・スピリッツ』の編集長が、“クォリティ オブ タイム”と書いていました。つまり時間の質が大事ということですね。ワインは質の高い時の過ごし方を与えてくれます」と、玉利さんはきらきらした瞳を輝かせて語ってくださいました。
ご主人はあまりワインを飲まないそうですが、玉利さんの影響を受け、コレクターとしてワインを購入しているそうです。ご自宅には、ご主人が集めている銘醸ワインと、イタリアワインのサシカイヤをはじめ、玉利さんの好きなワイン、そして日本のワイン、旅に出た時に買ってきた地元のワインなどが入ったセラーをお持ちとのこと。
一昨年はシャンパーニュ地方とブルゴーニュ地方を訪れ、三年前はオーストラリア、四年前にはイタリアへ旅をした玉利さん。
「ワイナリー訪問の時は、とても幸せでした。“食べること、飲むこと、選ぶこと”がわかったら、旅が10倍楽しくなると思います。それもワインを勉強したきっかけの一つかもしれないですね」。
近いうちにカリフォルニアのナパ・ヴァレーにお嬢さんを連れて行きたい、という玉利さん。家族でワイン・トレインに乗りたいのだとか。
お嬢さんのお名前はワインにちなんで、「杏珠(アンジュ)」と命名。バースデーヴィンテージとなる2004年のワインの購入は考え中で、市場にはまだ出てきていませんが、一緒にワイングラスを傾けるのはいつでしょうか。
きっとお二人でチャーミングにおしゃれをして、すてきな時を過ごすのでしょう。時間の質、おしゃれなワインを是非お嬢さんに伝えてあげてください。
そしてこれからも、ワインのつくるすばらしい時を、多くの人々に伝えてほしいと思いました。
プロフィール |
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玉利 かおるさん 鹿児島出身 熊本大学卒 |
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