第11回 脇屋 友詞さん
中国料理界で“ヌーヴェル・シノワ”の旗手として著名な脇屋友詞さん。オーナーシェフとして務める赤坂「Wakiya 一笑美茶樓」(わきや いちえみちゃろう)にて、ワインとの出会いや中国料理とワインについて、お話を伺いました。
初めてのワイン
初めてのワインは赤玉ポートワイン。子どもの頃、お正月になると、いつも振舞い酒として、“赤玉ポートワイン”があり、「なんとなくですが、お正月だけワインが飲めるのだ」と楽しみにしていたそうです。
脇屋さんがワインを好きだと思ったのは、料理の仕事をして何年か経ってからのこと。幾度かワインを飲む機会があった脇屋さん。立川リーセントパークホテルで仕事をしていた時、そこのハウスワインだったドイツワインを飲み、
「甘くてとても美味しいワインだと思いました。ワインというのは、こういう飲みやすくて美味しいものなのだなぁ」と初めて思ったとか。
それからは、甘い味のもの、酸味のあるもの、そして深い味わいのするワインなど、脇屋さんはさまざまなワインに興味を持ち始めます。
脇屋さんがワインに興味を持ち始めたのは、初めて中国料理の総料理長になった27歳の頃。当時、中国料理はほとんどが大皿で提供されていました。少人数で食べられる料理の種類があまりにも少ないことに脇屋さんは疑問を持ちます。「たとえお客様が一人で来店したとしても、前菜からデザートまで適量をゆっくり楽しんで欲しい。中国料理も一人一皿ずつフランス料理のようにサービスしたい」という願いを持った脇屋さんの中国料理は、伝統的な上海料理をベースに、一つ一つを小皿に美しく盛り付けるスタイルになりました。
そして、同じホテルにいたソムリエに、「中国料理にワインはどうだろうか?」と尋ね、ロゼ・ワインをメニューに取り入れたり、同じホテルにあるフレンチ・レストランのセラーから色々なワインを持ってきて、中国料理とワインを合わせてみるなど、豊かな発想でさまざまな試みを続けてきました。
初めはワインをボトルで注文するお客様は少なかったようですが、脇屋さんの中国料理は小皿に少しずつサーヴされるので、お客様も「グラスでワインを一杯いただきたいわ」と、中国料理とワインの組み合わせに、さほど抵抗はなかったようです。初めてのワインは赤玉ポートワイン。子どもの頃、お正月になると、いつも振舞い酒として、“赤玉ポートワイン”があり、「なんとなくですが、お正月だけワインが飲めるのだ」と楽しみにしていたそうです。
脇屋さんがワインを好きだと思ったのは、料理の仕事をして何年か経ってからのこと。幾度かワインを飲む機会があった脇屋さん。立川リーセントパークホテルで仕事をしていた時、そこのハウスワインだったドイツワインを飲み、
「甘くてとても美味しいワインだと思いました。ワインというのは、こういう飲みやすくて美味しいものなのだなぁ」と初めて思ったとか。
それからは、甘い味のもの、酸味のあるもの、そして深い味わいのするワインなど、脇屋さんはさまざまなワインに興味を持ち始めます。
脇屋さんがワインに興味を持ち始めたのは、初めて中国料理の総料理長になった27歳の頃。当時、中国料理はほとんどが大皿で提供されていました。少人数で食べられる料理の種類があまりにも少ないことに脇屋さんは疑問を持ちます。「たとえお客様が一人で来店したとしても、前菜からデザートまで適量をゆっくり楽しんで欲しい。中国料理も一人一皿ずつフランス料理のようにサービスしたい」という願いを持った脇屋さんの中国料理は、伝統的な上海料理をベースに、一つ一つを小皿に美しく盛り付けるスタイルになりました。
そして、同じホテルにいたソムリエに、「中国料理にワインはどうだろうか?」と尋ね、ロゼ・ワインをメニューに取り入れたり、同じホテルにあるフレンチ・レストランのセラーから色々なワインを持ってきて、中国料理とワインを合わせてみるなど、豊かな発想でさまざまな試みを続けてきました。
初めはワインをボトルで注文するお客様は少なかったようですが、脇屋さんの中国料理は小皿に少しずつサーヴされるので、お客様も「グラスでワインを一杯いただきたいわ」と、中国料理とワインの組み合わせに、さほど抵抗はなかったようです。
中国料理の世界へ
脇屋さんが中国料理の世界に入ったのは、中学校を卒業した15歳。
脇屋さんが中学2年の時、父親と一緒に東京・赤坂にある山王飯店で会食し、初めて“中国料理”に感動したのがきっかけでした。
「それまでは、チャーハン、ラーメン、餃子しか知りませんでした。だから、こういう“中国料理”があるのだ、こういうところで働きたいな」と思ったのだそうです。
「中学校3年の時。父親が山王飯店に『息子を預かってくれますか?』と頼むと、『本人にやる気があるならばどうぞ』ということで、一年後には、寮に布団と荷物が送られていました」と脇屋さん。
実は脇屋さんが料理人になるきっかけは、子どもの頃にあったようです。父親が作るチャーハンは油っこくてあまりおいしくないと思い、自分でチャーハンを作ってみると、みんなから「とても上手!」と褒められたのです。
「子どもは褒められると調子に乗るでしょ。だから、色々自分で作るようになり、チャーハンにお漬物を入れてみたり、ハムなど色々入れてみました。そしてまた褒められると、うれしかったのです。それで『この子は料理人に向いているから料理の道に行きなさい』という親の勧めもあり、いつの間にかそういう方向に向かっていました」。
脇屋さんの豊かな才能は小さい頃からのものだったのですね。
中国料理とワイン
ある時、フレンチ・レストラン『シェ・イノ』で、78年のシャトー・マルゴーを飲んだ脇屋さんは、その香りと味わいの奥行きのすばらしさに感動し、後日、オーナー・シェフの井上さんに同じワインを何本か売ってもらいました。「78年のシャトー・マルゴーはびっくりするくらい美味しく、こんな美味しいワインだと、ひと口飲んでお料理をいただきたくなり、そしてまたワインをいただきたくなるのだと感じました」。
脇屋さんは美味しいワインと美味しい中国料理の組み合わせを、もっと多くの人々にすすめたいと思いました。
「中国料理はフランス料理とあまり違いません。たとえば、どちらの料理も鶏を蒸したり焼いたりします。“フランス料理とワイン”との組み合わせが“中国料理とワイン”になると、感じるイメージが違うだけだと思います。自分の作る中国料理には、ソムリエと相談しながら、ワインとの相性を考えています。豚肉の煮込みやフカヒレ等は、普通なら紹興酒が合うというイメージですが、豚やフカヒレのゼラチン質にはブルゴーニュのワインのやさしく複雑な味わいが合うと思います。あまり濃い味のワインだとフカヒレの味が消えてしまうと思います」と分かりやすく解説していただきました。
お話を聞いていると、脇屋さんはフランスワインがお好きなようですが、イタリアやスペインに旅をする際は、その土地のお料理にその土地のワインを合わせて楽しんでいます。料理とワインの組み合わせは、その土地の気候や温度、風土に合わせることも大切で、これは中国茶にもあてはまるとのこと。「中国で気に入った中国茶を買って日本へ持って帰ると、同じ味わいには感じられないことがあります。北海道でいただくラーメンを東京でいただくと、いただく環境の気温が違うので、ラードの味や感じ方が変わってしまい、同じ味わいにならないのと同じことです。その昔、中国では、出してきたお茶と買ったお茶が違うことがありましたが、最近はそういうことはありません。土地の環境の違いが味の感じ方を変えてしまうのです」と、中国茶に詳しい脇屋さんから教えていただきました。
記念のワイン
脇屋さんは1958年生まれなので、58年のワインを見つけて、ご自分のバースディ・ヴィンテージのワインを開けて楽しまれているようです。昨年、双子のお子さんが誕生したので、記念のワインを探すと、まだ市場に出ていないことが判かりました。いつかお子さんのバースディ・ヴィンテージを買いたいと脇屋さん。どんなワインを探されているのでしょうね。
脇屋さんが香港の中国料理店でワインを飲んだ時、中国料理とワインがこんなに合うのだと改めて感動したそうです。そのワインは値段が十何万円と高価なものでしたが、状態はよく、とても美味しかったと、語ってくれました。
中国料理とワインを合わせる時には、毎回そんな高価なワインというわけにはいきませんが、たまにはそんな貴重な機会があればいいですよね。
中国料理とワイン
脇屋さんが勧める“中国料理とワインの選び方”をお聞きしました。「人数が多い時は、たくさん飲みたい人もいるでしょうから、リーズナブルで美味しいワインをいくつか頼んではいかがでしょうか。二人で食事の場合は、ちょっといいワインを一本。お財布の都合もあると思いますが、シャンパンをグラスで頼んで、あとは美味しい赤ワインをボトルで一本頼む。特に男性と女性が二人で食事をされる時には、男性が少しリードして女性にワインを選んであげたり、女性の好みを聞いてあげるのがいいと思います。お二人ともワインについて詳しい時は相談しながらでもいいのではないでしょうか。たまには値段も見ながら(笑)。女性もワインに興味を持つことは良いことと思います。ただ、あまり能書きを言われると困ってしまいますね(笑)。ソムリエに相談するのもいいでしょうね。探す楽しみ、訊く楽しみがあると思います。中国料理は味わいがさまざまで、さっぱり味の前菜から始まり、濃い味のメインに移っていくため、味わいのバランスを考えてワインを選んでみてください」。
お料理が美味しい時にはお酒も進み、お料理が進むにつれ、次から次へお酒を頼まれるお客様もいらっしゃるとか。そんな時は料理を作る方もうれしくなってくるそうです。
「お酒の注文が入ったと聞くと、どんなものを飲んでいらっしゃるのだろうと興味が出ます。サービスをする方も、お客様が気に入ってくださっている様子を拝見するのはうれしいことです」とにっこり。
これからの夢
調理場に立つ以外は、料理番組の出演、調理師学校の講師や講演会などで、若い料理人の育成のため精力的に活動している脇屋さん。これからの夢についてお聞きしました。
「少し前までは、中国料理というと中国人が料理長で、トップは中国人と決まっていました。しかし今は、日本人でもトップになっているところが増えています。フランス人にも受け入れられる、日本人によるフランス料理があるように、日本人による、すごく高度なテクニックで作る中国料理を、世界の人たちにも喜んでもらえるよう作り続けていきたいです。それにはお酒、ワインは必要なものと思います。中国料理とワインを合わせて、世界の人々に楽しんでもらいたいです。私も、世界の人たちに認めてもらえ、楽しんでもらえるような中国料理を作りたいです。アメリカでチャイニーズというと、『え、チャイニーズ・・・』といわれるように、中国料理はまだまだ格の低いイメージがあります。チャイニーズも、“中国料理とワイン”でお客様の接待もできるのだという、高度なテクニックで作られる中国料理のイメージを確立したいです。ぜひ世界の人に“中国料理とワイン”が浸透してほしいと願っています」と脇屋さんは情熱的に語ってくれました。
家ではほとんど料理はしないという脇屋さんですが、一年に一度くらい、料理をします。そしてソムリエに選んでもらった、リーズナブルで美味しいワインを飲むのだそうです。脇屋さんが自宅で作るのは鍋料理。日本の鍋料理と違い、「ジャン(醤)」を使った鍋です。中国料理で使う材料で味をとったスープを用意し、野菜やバラ肉を入れていただきます。これがワインにもすごく合うとのこと。どんなお鍋か興味津々です。
脇屋さんに、ワイン村の読者へメッセージをいただきました。
「ヘルシーな和食ブームは世界的に根強いですよね。だからこそ僕はそろそろチャイニーズの時代がやってくると思います。世界中どこでもチャイナタウンがあるように、これから中国料理とワインの組み合わせの可能性もどんどん広がっていくのではないでしょうか。ワインの造り手にもこの素晴らしいマリアージュを、是非僕の店で楽しんでいただきたいですね」。
脇屋さんにとって、ワインとは人間と歴史みたいなもの。
「ワインにも歴史があります。それからワインには、人と同じように色々な個性があります。人との出会いのように、ワインにも出会いがあります。
これまでもこれからも、人には色々な出会いがあるように、失敗のワインに出会うこともあるかもしれませんが、喜びのワインと出会うこともあり、まるでドラマのようです。この人と出会ったおかげで色々な世界が広がっていくというように、このワインに出会ったおかげで、人生が広がることもあるでしょう。お酒を飲みすぎるのはいけませんが、お酒はその場を陽気にし、楽しくしてくれる、すてきなものだと思います」と、ワインから人生哲学を語ってくれました。
こんな素敵なお話を聞いて、私のこれまでの中国料理のイメージは払拭されました。中国料理にワイングラスを傾ける素敵な楽しみ方を、これからも世界に浸透させていってほしいですね。
プロフィール |
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脇屋 友詞(わきや ゆうじ)さん 《信条》 1958年 札幌市生まれ 《著書》 《テレビ》 |
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