皆さま、こんにちは。
蝉の声が力強く響き、一年で最も暑さが厳しい時節を迎えました。

こうした暑い夏に、私はよく祖母の味「茄子(なす)そうめん」を作ります。

作り方はお鍋一つでとても簡単です。
まず、茹でたそうめんを一度水切りしておきます。
次にお鍋にごま油を敷き、細かく隠し包丁を入れて一口サイズに切った茄子を、表面がツヤっとなるまで炒めます。
そこに生姜をピリッときかせた醤油味のお出汁を注いでコトコト。
茄子が柔らかくなったところでそうめんを戻し、お出汁をたっぷりと吸わせれば完成です。
出来立てはもちろんですが、冷蔵庫で一晩冷やすと味がさらに染み込み、食欲のない日でもツルツルと喉を通ります。
東洋には「五味五色(ごみごしょく)」という知恵があり、夏は「白・赤・黄・緑」に加えて、茄子のような「黒いもの」を食べると良いとされています。
おばあちゃんの料理は、まさに理にかなった健康食だったのですね。
この茄子そうめんには、興味深い物語があります。
かつて加賀藩領であった奥能登の「輪島」は、江戸時代、全国に名を
とどろかせるそうめんの一大産地でした。
その品質は「輪島塗」よりも古い歴史を持ち、藩主が徳川将軍家へ献上するほどの特別な名産品だったそうです。
江戸後期、この貴重なそうめんが庶民にも広がると、金沢の城下町では夏に大量に採れる茄子と結びつきました。
茄子の紺色が醤油とともに麺に染まることを、金沢では「かぶれる」と呼び、別名「なすのそうめんかぶし」として愛されてきました。
特に、明治以降にブランド化された加賀野菜の「へた紫なす」を使うと、身が崩れず「とろり、むっちり」とした食感に仕上がります。
かつてのお姫様たちも愛したであろう、上品で贅沢な夏の味です。
さて、お姫様が愛した茄子のお話に続いてご紹介するのは、フランス・オーヴェルニュ地方の「王に愛されたチーズ」です。
その名は「サン・ネクテール」。

標高1,000メートルを超え、夏には香り高い花々が咲き誇る山地で作られるこのチーズは、熟成方法に大きな特徴があります。
なんと、乾燥させた「ライ麦のわら」の上で寝かせるのです。
数週間、表面を塩水で洗いながら熟成させると、皮は灰色がかった貫禄ある姿になり、森のキノコのような力強い香りが生まれます。
ところが、一口食べてみれば、中身は驚くほど弾力があり、むっちりと柔らか。
ヘーゼルナッツのような上品な風味と、ミルクの優しい甘みが広がります。
17世紀、地元オーヴェルニュの貴族、アンリ・ド・セヌテール元帥(げんすい)が「太陽王」ルイ14世にこのチーズを献上したところ、王はその味を大絶賛しました。
あまりの気に入りように、元帥の領地の名前をそのままチーズの名前にしてしまった、という逸話が残っています。
まさに、王様が「一口惚れ」した味なのですね。
キリッと冷やしたお皿に、旬の果物や野菜を添えて。瑞々しい桃と涼やかな大葉がおすすめです。赤ワインはもちろん、冷やした麦茶との相性も抜群です。
王様が愛した贅沢な風味で、夏の午後をゆったりと過ごしてみませんか。
金沢の「茄子そうめん」と、フランスの「サン・ネクテール」。
美味しいものは、いつも誰かの手によって大切に守られ、伝えられてきました。
しっかり食べて、この夏を健やかに過ごしましょう。
こうした季節のしつらいや、旬のチーズの楽しみ方を体験していただける講座を、毎月月末に金沢市広坂の教室で開催しています。

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皆さまにとって、今日が素敵な一日となりますように。


