季にあひたる ~MRO北陸放送~

蒲焼と『グラナ・パダーノ』が出会う夏

皆さま、こんにちは。

梅雨入りした金沢の街は、しっとりとした雨の一日を迎えています。
この季節の雨は恵みをもたらす一方で、最近は全国的に大雨のニュースも聞かれます。どうかこれ以上被害が広がらず、穏やかな日々が守られますよう、心から祈るばかりです。

来週、7月1日の「氷室(ひむろ)の日」を過ぎれば、本格的な夏です。
この季節になると、私は決まって祖母の後ろ姿を思い出します。
私の祖母は食材を購入するお店をきっちり決めていました。近江町市場のお魚屋さんやいつもの八百屋さん、果物屋さんにお肉屋さん。厳しい目利きの祖母でしたが、お店の方も常連の祖母のために、選んだ商品をそっとさらに良いものに替えて包んでくれたそうです。そこには温かい信頼関係がありました。
そんな祖母が、夏に向かうこの時期によく買ってくれたのが、どじょうやうなぎの香ばしい「蒲焼き」でした。

夏になぜ蒲焼きを食べるのか。実は、うなぎ本来の旬は秋から冬なのですが、江戸時代に平賀源内が「土用の丑の日。うなぎを食べると夏負けしない」という張り紙をしたことで、夏の定番になったと言われています。うなぎは実際に疲労回復のビタミンB1やビタミンAが豊富で、夏バテ防止にぴったりの食材。現代の養殖技術のおかげで、夏のうなぎも脂がのって絶品です。
また、カルシウムや鉄分が豊富な金沢のソウルフード「どじょうの蒲焼き」も、古くから市民の過酷な夏を支えてきました。

こうした旨味が凝縮された和の蒲焼きに、現代の風を吹き込んでくれるのが、イタリアのハードチーズ「グラナパダーノ」です。「グラナ=粒状の」という意味を持ち、現地では「キッチンのハズバンド(夫)」と呼ばれるほど欠かせない存在。おだやかで優しい塩味とまろやかな旨みが特徴です。

今日はスタジオに、一口大のかち割りと、削りたてをお持ちしました。

おすすめのアレンジは、『蒲焼きに、すりおろしたグラナパダーノ』。
温めたどじょうやうなぎの蒲焼きに、雪のように削ったチーズをふんわりかけるだけです。熱でじんわり溶けたチーズとタレが絡み合い、山椒を少し多めに振ると、味がきゅっと引き締まって洗練されたおつまみになります。
濃いめに淹れた加賀棒茶や、山廃吟醸(やまはいぎんじょう)の日本酒、そして赤ワインとも相性抜群です。

こうした私の想いを、著書『季(とき)にあひたる和魂洋才のしつらいと工芸 加賀料理とチーズのある暮らし』にまとめました。漆塗りの器に蒲焼きを盛り、真っ白なグラナパダーノを降らせる。そんな器の美しさを愛でる時間が、心と体を優しく癒やしてくれます。


それでは、この夏に皆さまと過ごす、特別な3つのイベントをご案内します。

まず1つ目は、7月12日・日曜日の午後2時から、上堤町(かみつつみちょう)のホテル「Minn金沢」の1階で開催する『実力派ナチュラルチーズとパンを楽しむ in 金沢』。
能登の「大地の虫」さんのチーズと、「パン屋たね」藤田さんのパン、そして「ぶどうの森」福島さんのドリンクペアリングが響き合う贅沢なセッションです(お申し込み締め切りは7月5日)。

2つ目は、8月9日・日曜日のお昼12時から、ひがし茶屋街の町家フレンチレストランで開催する、かなざわ・まち博「屋台大学」和魂洋才のディジュネ『フレンチと能登復興応援日本酒』。

そして3つ目は、翌8月10日・月曜日。翌日の「山の日」が祝日となる、その前日の夕方6時から、南町の老舗料亭で開催する、かなざわ・まち博「屋台大学」和魂洋才の夕べ『加賀料理とハンガリーワイン』です。

どのお席も、私、ワインエデュケーター、日本酒学講師の早川由紀が、心を込めて皆さまをご案内させていただきます。
詳しいお申し込み方法は、「かなざわまち博」のウェブサイトや「チーズプロフェッショナル協会」のウェブサイトをご覧ください。

皆さまの安全と平穏を祈りつつ。どうぞ、温かで美味しいひとときをお過ごしください。

早川由紀 金沢市出身。「和魂洋才」を掲げ「WAKONN」を設立。移ろいゆく季節、鮮やかに姿を変える風景を楽しみ、折々の行事を心を込めてこなしていた祖母の暮らしを受け継ぎ、しつらいの魅力を伝えるイベントやセミナーを積極的に展開。