季にあひたる ~MRO北陸放送~

晩秋から冬にかけて楽しむ「白霞」

みなさま、こんにちは。

11月も後半となり、金沢の街はしっとりとした冬の空気に包まれてきました。

名園の「雪吊り」や家々の「こもかけ」。
職人さんたちの手仕事が、水分を含んだ重たい金沢の雪から、松の枝を守る準備を整えています。

「息をすれば肺に水分が溜まるようだ」
そんなふうに表現して、この街独特の湿り気を珍しがる旅人たちもいらっしゃいます。

寒さは少し寂しくもありますが、この季節ならではの「食の楽しみ」が、身も心も温めてくれます。

11月14日に解禁された「香箱ガニ」で近江町市場は活気づき、「源助だいこん」や「加賀れんこん」といった冬野菜も、寒さとともにぐっと甘みを増してきました。

先月10月24日には、嬉しいニュースがありました。

私たちの誇りである「加賀料理」が、無形文化財への登録に向けて答申されたのです。

私にとっての加賀料理とは、祖母が作ってくれた「治部煮」や「鯛の唐蒸し」、そして季節ごとの器やしつらい、懐紙を用意して持たせてくれる和菓子など、相手を想う「もてなしの心」そのものです。

和菓子には「冬まつ」「福梅」、そして霞がかった雪景色を映した「冬霞(ふゆがすみ)」など、美しい銘が付けられています。

実は、日本のチーズにもそんな風情ある名前のものがあるのです。

本日ご紹介する新利根チーズ工房の「白霞(しらがすみ)」。
茨城県・霞ヶ浦の早朝、湖面に幻想的に漂うミルク色の霧や霞(かすみ)。その白くふわりとした景色をイメージして名付けられました。

このチーズは、生乳に乳酸菌と酵母を加え、一晩かけてゆっくりと発酵させて作られます。
まさに「生きているチーズ」であり、包装後も冷蔵庫の中で呼吸を続けています。熟成とともに水分が抜け、100gあった重さが賞味期限の頃には70gほどになることもありますが、それは旨味がぎゅっと凝縮された証でもあります。
楽しみ方も実に多彩です。

爽やかな酸味とミルクのコクは、ジャムや蜂蜜と合わせればまるで洋菓子のように。
一方で、鼻の奥に抜けるほのかな醸造香は、同じ発酵食品であるキムチや、いぶりがっこと相性抜群。キリッとした白ワインやスパークリングワインを合わせれば、晩秋から冬にかけての夜長に最高のお供となります。

冬場はトロリと溶け出すような食感に変化しますので、季節による違いもぜひ味わってみてください。

こうしたチーズの奥深い世界や、季節のしつらいを学ぶレッスンを毎月末に開催しております。
この秋からは、ご要望の多かった「奇数月の土曜午後クラス」も新設いたしました。
冬の食卓を彩る知恵を、一緒に学んでみませんか?

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旬のチーズ:コーディネート講座(講師:早川由紀)

オンラインレッスンもあります。ぜひお気軽にお問い合わせください。

そして、今年好評だったフランスチーズシュヴァリエの米田シェフによる「チーズフィンガーフード教室」を、来年2月11日(水・祝)に再び開催する予定です。
会場は金沢駅から徒歩5分の「ぶどうの森 タパス エ バール」です。
チーズを用いたフィンガーフードと美味しいワインを楽しみながら、ご一緒に学びましょう。

ぜひ、スケジュール帳にメモしていただけると幸いです。

早川由紀 金沢市出身。「和魂洋才」を掲げ「WAKONN」を設立。移ろいゆく季節、鮮やかに姿を変える風景を楽しみ、折々の行事を心を込めてこなしていた祖母の暮らしを受け継ぎ、しつらいの魅力を伝えるイベントやセミナーを積極的に展開。